blogユーザーインタビュー:One ip特許業務法人

​​スタートアップの知財を支える精鋭たち

One ip特許業務法人

坂本 真一郎 様

 

スタートアップのIP経営を支援するOne ip特許業務法人。様々なスタートアップ企業に最適な知財活動を提案すべく、日夜奔走されています。急速に変化するスタートアップの事業ではスピードが命。そんな現場でAmplifiedが活用されています。

── One ip特許業務法人の特許事務所としての特徴を教えていただけますか?

 主に、スタートアップの知財活動を支援しようということで、2018年に創業した事務所です。代表の中畑は元々コロプラやFiNCといったスタートアップのインハウス弁理士として働いていました。スタートアップの知的財産部として、創業期から上場まで経験したことから、知財のサポートを厚くすることで、スタートアップがより活躍できる世の中を作ろうというコンセプトで始まりました。

 2年前に現在のOne ipという名前に変わったのですが、今でもコンセプトは変わっていません。400社程度のクライアントの98%はスタートアップで、創業間もない会社から上場間近の会社まで様々です。事業分野も技術分野も様々なお客様に、スタートアップとして「今、必要な知財活動」を提供しています。もちろん業務の一環として、いわゆる出願業務も担当していますがそれがメインというわけではなく、お客様が事業を拡大していくために必要な知財活動の企画、提案が主であり、その実行過程に出願業務が含まれているというイメージです。 

── スタートアップ支援に特化というのもユニークですが、知財活動を提案していくというのはさらにユニークですね。どういった提案がありうるのでしょうか?

問題は会社のフェーズによって様々ですが、やるべきことがやれていない場合があります。例えば、創業から3〜4年経っていて、サービスもローンチしているが、実は社名を商標出願していなかったですとか、競合他社が出てきているのに、そこがどんな特許を出しているか全然気にしたこともなかったなど、そういうことがあります。こういったときには、簡易でも良いので特許調査をしてみる。その中で他社の狙いが透けて見えたりするので、それに対抗した特許を出願しておきましょうといったご提案をすることがあります。

また、会社のフェーズによっては、スタートアップ内部に知財担当者を育成できるようサポートもします。担当者に知的財産部としてのタスクを実行していただき、我々との定例ミーティングで報告をしていただくという形をとっています。

事務所としてはたくさん出願した方が儲かるというのはその通りなのですが、意味のない出願をしてもスタートアップのためにはなりません。スタートアップが事業拡大できなければ世の中は変わっていかないので、貴重なスタートアップの資金を不要なことには使えません。スタートアップファーストを原則に、知財活動を提案していくことを心がけています。 

── まさにスタートアップ経験者の集まりだからこその視点ですね。坂本さんご自身はどういったご経験からOne ipにジョインしたのでしょうか?

私は元々大学院でバイオ系の研究を行っていたのですが、研究論文が出たとしても、その技術はなかなか世の中に広まっていかないのだなということを感じていました。そんな折、知人が会社を立ち上げるという話があり、ビジネスの世界も見ておきたいということでジョインしました。その会社はポスドク問題や、技術移転の問題などの解決を目指しており、今でいう大学発のディープテックの事業開発を主眼においていました。そこで、自分達も事業開発を行ったり、様々なシード技術を元にしたアクセラレーションを行ったりしています。

テクノロジーベースのこういった事業は事業化に時間がかかります。大学の先生や職員にはそういった経験やノウハウがないことがほとんどなので、資金調達や事業計画の立案のお手伝いしたり、補助金や助成金などの申請支援など、そういった泥臭いことをやりました。技術で世の中を豊かにしたいっていう思いの中で仕事をしてきましたが、前の会社で少しやりきれてないと思っていたのが知財についてでした。知財業務は知識を持っていたとしても、肌感覚を身につけるのが難しい。例えば、どういう特許を取ると事業にどんな影響があるのか、どのような文言の権利を取ればどういう効果が得られるのか、といったところまでなかなかつかめない。ディープテック領域での特許はとても重要で、出願や情報開示のちょっとしたミスが命取りになりかねないですし、他社に特許を取られたなんてことはよく起きている。そういった現場を見てきて、もっと知財のことをなんとかしたい。事業開発や資金調達などをやってきた上に知財の知見が加われば、いろいろな貢献ができるのではないか、というのがOne ipにジョインした理由です。

先程もお話しましたが、テクノロジーベースのスタートアップは事業が華開くのに時間がかかります。そういったハイリスクな事業に投資するにあたって、特許の役割は小さくありません。スタートアップとしては少なくとも出願がされていれば、他社との提携の中で交渉面で有利に働くこともあります。さらに、特許が取れたとなれば、不確実な事業領域の中で、少なくとも特許がある範囲では安心して事業ができ、開発の予算を投資できるといったことがあります。また、目立たないですが特許が出願されていることによる牽制効果というのは結構あります。競合がこんな出願をしている、じゃあ自分たちはやめておこうかという判断は、自分たちには目には見えませんがよく起こっていることです。

── 私も大学の研究成果を企業に引き継ぐ挑戦をしたことがありますが、非常に難しいお仕事だと思います。そういったノウハウは大学や研究機関の現場には蓄積されていません。 

そこにはすごい課題があります。特に大学は自分たちが事業主体になることがありません。さらに人員と予算がどんどん減らされている中で、大学自体が特許を取って収益をあげるというのは、それが推進されてきたここ20年くらい、うまくいっているとはいい難い。そういった中で大学が今から出願・権利化していくというのは難しいという判断も理解できます。

一つの解は、よく言われていることだと思いますが、繋ぎとしてのスタートアップだと思います。技術をインキュベートして、ビジネスをある程度の規模まで育てる。その続きを自分たちでやるというのもあり得ますが、相乗効果のある他社に渡していくという繋ぎの機能としてのスタートアップというのは、とても重要だと思っています。ただ、簡単なことではありません。幅広い知見、例えばビジネスのこと、お金のこと、技術のこと、知財のこと、そして大学の研究者や先生たちの価値観など、幅広い知見がこの課題に取り組むには必要ですが、1人でやるのは難しいですよね。ですから強みを持ち寄ったチームで取り組む事が重要だと思います。その一員として、スタートアップの伴走ができる事務所を目指しています。

── スタートアップをサポートする現場でAmplifiedをご活用いただいているわけですが、その典型的なシーンはどのようなものでしょうか? 

やはりスピードが重要視される瞬間があります。ある技術があって、競合がもうサービスをローンチするらしいと噂になっているようなときに、1秒でも早く出願したいという状況は結構起きます。そういうときには、すぐに似たような技術や特許があるかないかを調べたい。似た特許がある場合には、その特許との違いを明確にして、すぐに起案を始めます。こういうときに、ある程度精度が高く、似た先行特許がないかを調査したいというニーズがあります。特に私は調査業務経験が豊富にある訳ではなく、従来のアプローチではすぐに結果を得るというのができない場合があるので、テキストですぐにある程度精度の高い結果が出てくるのは助かります。打合せの最中に、お客様に結果をすぐに見せられることで、議論が前に進みますね。

 私以外のメンバーもAmplifiedを利用していますが、短時間で出願したいというシーンではパッと調べて、出てきた文献を参考に出願内容を検討するというプロセスでは、十分に機能しているという人が多いです。

── 他にもAIツールはありますが、Amplifiedを選んだ決め手はどこでしょう?

特許的な言葉でなくても、例えばお客様からいただいた資料からのコピペでも、ある程度精度の高い結果が得られたことでしょうか。感覚的に調べられるということですね。特に早く出願したいという状況では、Amplifiedから出てくる検索上位の文献に目を通したうえで、ある程度結論を出しちゃってもいいのではないかと思います。もちろん調査は目的次第なので、例えば競合企業の特許調査などでは伝統的なデータベース検索が必要になるシーンはあります。検索式を作るための初期調査として、FIやFタームの選定をする場合などにも、Amplifiedの結果が有用だと思います。このように、調査が発生する仕事全般でAmplifiedは有効に使えると思います。 

あと、お客様が知財部機能を社内に持ちたいといった場合に、担当される方には調査経験がないことがほとんどです。しかし、外部の調査会社を活用するためには、担当される方にも肌感覚を持っていると効果的な調査依頼ができると思っています。そこで、ゼロから検索の方法を学ぶよりも、AmplifiedのようなAIを使って、どのような問題特許がありうるか目星をつけたり、あるいはそういった特許を感覚的に素早く見つけ出すことができれば、調査専門ではない知財担当の方としては、ある意味それで十分なのではないかと思います。 

スタートアップの場合、知財専門のスタッフを抱えるというよりも、法務担当の方が兼任でやっているという状態も多いです。そういった状況で100〜200件の特許を短期間に読んでいくというのは現実的ではありません。Amplifiedのようなツールで、重要なものを感覚的にピックアップできて、外部の協力者と連携して課題を解決していければ、すごく使い勝手が良いものになります。

特許事務所は労働集約的なサービス業なので、業務のスピードが上がることで提案できることは増えます。One ipは出願業務もありますが、サービスの本質はスタートアップの成長のために、必要な戦略や今やるべき知財活動を企画して提案することです。事務所としては、その本質的に重要なところに少しでも時間を使えるようにしたいので、Amplifiedは私たちが適切な提案をするための土台となるツールだと思います。

── そういった活動においてAmplifiedに希望する機能はありますか?

 マクロな状況理解をしたいというニーズはありますね。特許一件一件の定性的な調査というのもすごく重要なのですが、Amplifiedの調査結果が何かしら定量的に示されてマクロな状況が見えると、すごくいいのではないかと思います。スタートアップで知財に詳しくない人が、マクロな状況を仕入れて、自社の事業の知財に関する感覚を得た上で、開発の方向性や出願の検討をできるというのは非常に有用だと思います。 

── スタートアップの知財活動サポートという側面でお話を伺ってきましたが、事務所として今後の目指す姿はどのようなものでしょうか?

 One ipとして多くのスタートアップに並走してきて、その難しさも理解していますし、多くの知見も溜まってきたと思います。今後もスタートアップの事業拡大において、知財が有用なものだということを知っていただく活動を進めていきたいです。

スタートアップではほとんどの場合、創業初期の早い段階である程度アイデアは固まって、それを形にするという流れになります。そのため、理想的には初期の段階でまとまった数の特許を出願しておきたい。しかし、そうはいかないのは、やはりお金の問題です。創業初期であればあるほど、リソースはありません。この点を解決するために、まだまだ数は少ないですが数社のスタートアップには私たちが出資をさせてもらい、知財予算として使ってもらっています。もちろん、One ip以外の事務所に出願業務を依頼してもらっても構いません。自分たちの事業領域や技術に詳しい弁理士の先生とともに、創業初期の段階から知財活動に取り組んでもらいたいと思っています。このようにスタートアップの知財面を支援する取組は特許庁でも行われていて、スタートアップのための支援枠として、審査請求費用の割引など様々な施策があります。スタートアップの皆さんの、知財活動に対する意識がさらに上がるといいなと思っていますし、他の知財業界の方々と一緒になって、スタートアップ支援の輪を広げて行きたいと思っています。