blog特許調査になぜAIが必要なのか? Amplifiedが持つ問題意識

はじめに

皆様こんにちは。株式会社amplified aiの追川と申します同社の共同創業者でCOOを務めています。弊社ではAIを利用して特許を調べて、読んで、発明を書くためのデータプラットフォーム「Amplifiedを開発しています。

今後このnoteを通じて、Amplifiedについての小ネタを色々とご紹介していきます。どうぞ宜しくお願いします。

今日は初回ということで、amplified ai, inc. を創業するに至った最も大きな理由である「特許制度に対する問題意識」について書きたいと思います。これについては、先月6月22日の正式ローンチの際に、Forbes JAPANやTechCrunch、日経新聞など複数のメディアで記事にしていただきましたが「増えすぎた特許に対応するためにはAIが必要である」という我々の考えを改めてお伝えすることから、noteを始めたいと思います。 ご意見やご感想(ご批判も!)ぜひコメントいただけたら嬉しいです。

特許制度とは?

特許制度は極めて長い歴史を持つ法制度で、その原型ができてから実に400年近くが経過しています。現行の日本特許法は1959年に作られ、その第一条に特許法の目的が明確に記載されています。

この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。

ここでの「保護」とは新しい発明を創出した人に、その発明の実施における排他権・独占権を付与することです。この権利は、発明の詳細を記した文章を公開して、後に誰もがその発明を参照して発展させられるようにすることの対価として与えられます。この独占と公開のバランスで”発明を奨励”する制度が特許制度です。

実際の運用では、発明者は要求する権利範囲を請求の範囲として書き、その権利範囲を説明する文章として明細書図面を準備して特許庁へ出願します。出願を受理した特許庁では、審査官がその請求の範囲が既存の発明と同一でないか(新規性)や、既存の発明との差が自明なものでないか(進歩性)ということ評価します。こうした審査を経て要件が認められると、特許権が付与されるわけです。発明は特許として出願されると、その内容は特許権として認められるかどうかに関わらず、出願から1年半が経過すると公開されます(公開公報)。この公報が、発明の詳細を世に伝える役割を果たします。

特許制度がどのように機能しているかの事例として、3Dプリンタが挙げられます。3Dプリンタは1988年にStratasys社が開発した熱融解積層方式という樹脂を溶かして積み上げる特許がもとになっています。この特許が2009年に期限を迎えたことで後続の3Dプリンタが多数市場に出て、1988年には普及していなかったインターネットと融合してMakersブームを盛り上げました。これは基本特許から後続の製品が次代の技術と融合して新しい市場を生むという、特許制度のいい事例になっていると思います。

増えすぎた特許が特許制度を殺す...

特許制度ができて400年の歴史が経っているわけですが、私たちはその制度が今、構造的な危機に瀕していると捉えています。その最大の原因は増えすぎた特許自身です。まずは実際の数字をご覧ください。上のグラフは2000年から2018年までの世界の特許出願の累積数(*1)です。2018年だけで300万件以上の特許が新たに出願され、2000年からの累積での特許出願数は4000万件超ということになります。比較のために、自然科学・工学の科学論文の累積出版数(*2)も表示しています。特許文献はもはや学術文献を凌駕する膨大な技術文献資料となっており、その数は加速度的に増えていることがお分かりになると思います。もちろん2000年以前にも特許は存在しますので、Amplifiedのデータベース上では実に1.2億件の特許公報が存在しています。

特許制度は、先に述べた独占と公開のバランスの上で成立するものですが、私たちは、膨張する特許件数によってこの公開の側面が脆弱になっていることが現代の特許制度の課題を生み出していると考えています。その課題とは「自分の参照すべき特許文献が、すぐに見つからない」ということです。

この課題は特許制度に関わるあらゆる人に共通する課題となっています。 例えば...

【技術者】過去に同じ技術課題に取り組んだ発明が存在するか知りたいが、簡単に見つけられない。 【事業者】考案中の新製品が他社の特許を侵害するリスクがないか知りたいが、調べるコストが多すぎる。 【審査官】審査にかけられる限られた時間の中で、十分な審査ができているか分からない。

特許文献の肥大化に伴い、発明の公開による恩恵よりも特許を調べるコストが大きくなっているのが現状です。ちなみに皆さんはこのコストが大体年間幾らかご存知でしょうか?

特許庁の報告書によると、特許情報提供サービスの市場規模は日本だけで1000億円です(*3)。これだけのコストが、本来は無料で誰もが読めるはずの特許を探すためだけに費やされているのです。このコストはスタートアップや個人、中小企業にとっては現実的に支払えないレベルにきており、特許に関するリスク評価が不完全なまま事業を行うことが現実に起こっています。

これこそが人間が発明をすればするほど、特許を出願すればするほど顕在化する、特許制度に関わる全ての人にとっての構造的な課題なのです。そして、私たちはこの課題は技術的に解決できると考えており、そのためにAIを使うべきだと提案します。

AIで人の創造性をAmplifyする

AIというのは技術的には機械学習のことです。機械学習は大量のデータに潜む特徴(パターンや分布)を得る技術です。特許の文章も文字列のデータですから、そこに潜む特徴を機械学習で取り出すことができます。Amplifiedはこの特許文献の明細書という長文の特徴を深層学習によって取り出し、現在デジタル化されている特許同士の類似性を評価し尽くしたエンジンを保有しています(*4)。そのため機械が認識する特許のデータとしての類似性は既に用意されています。この学習済みエンジンの上で人間が検索をすることによって、機械が見つけた類似性と人間の言語能力を用いた検索が組み合わされ、特許調査にかかる時間が劇的に短くなります

このように、AIを活用して見るべき特許を極めて短時間で取得し、その文献を読んでより良い発明をしたり、より強い権利を取ることに時間を有効に使って欲しい。そして特許法が謳うように、特許を通じて人の創造性を増幅(Amplify)させたい、という想いがamplified ai, inc.の創業と社名に繋がりました。

まとめ

これからも、発明が行われれば行われるほど、特許が増えれば増えるほど、ますます見るべき特許の発見は困難となり、特許制度は機能しなくなります。その解決策となるAIソリューションとして、データプラットフォーム「Amplified」を作りましたAmplifiedに興味を持ってくださった方がいれば、ぜひ使ってみてご意見お聞かせください。

次回以降、増えすぎた特許にAIがどうアプローチするのか、AIと従来の概念検索がどう違うのか等について解説を進めていきます。宜しければフォローお願いいたします。