blogユーザーインタビュー:正林国際特許商標事務所

事業に知財を融合する「ライブ調査」

~ファシリテータとしての弁理士~

正林国際特許商標事務所 副所長 弁理士 齋藤 拓也 様

特許をはじめとする様々な知的財産に関するプロフェッショナルである弁理士。知的財産の重要性が増すに連れ、弁理士の担う役割が変化しています。事業に活きる知財活動をハンズオンで提供する現場で、Amplifiedが活用されています。

── 早速ですが正林国際特許商標事務所様についてご紹介いただけますか?

事業を伸ばす知財スペシャリストを標榜しています。設立23年目と比較的若い事務所ですが、総勢330名程度で、日本で一番成長している特許事務所の一つだと自負しています。メンバーの特色としては、民間出身の弁理士に加え、特許庁の審査官・審判官経験者が多く在籍しているということです。私のような現場叩き上げの弁理士は、発明を的確に把握して的確に表現する明細書を書くプロです。一方で審査官・審判官経験者というのは新規性や進歩性の評価をしてきた、いわば明細書を読むプロです。特許を取る、侵害を判断するといった弁理士の仕事では、この書き手と読み手がタッグを組むというのが最強です。そういった陣容で、事業を伸ばすための知財活動をサポートしています。

また、特色として、標準化を専門とした事務所を併設しています。こちらは2019年2月に設立したもので私が所長を務めています。非常に新しいものですが、これは特許事務所として日本初の市場競争のための規格開発のパートナーと位置付けています。民間の団体規格、国家規格(JIS)から国際規格(ISO等)まで、様々な規格の開発を支援して、認証による品質保証により新たな市場の創造を支援するものです。このような規格開発の支援やアドバイスは2019年の法改正で弁理士の標榜業務の一つになったもので、私たちが先陣を切ってサービスを提供しています。

── 規格や標準においても知財の重要性は長く指摘されていますね。

標準化の目的の一つは技術的な仕様を統一してユーザの便益を適えることなので、いわば特許や知財による差別化・占有とは対極にあるようにも思えます。ですが、知財をうまく使うと、ライセンスによって仲間を集めて新たな市場の成長を促すこともできます。そこに標準化を専門とする事務所と、権利化に強い事務所が併設されていることに意義があると思います。例えばQRコードの特許は2014年に切れていますが、今でも幅広く使われています。QRコードの商標ライセンスは続いています。どうしても技術は陳腐化してしまいますが、便利なものは市場に残ります。特許が切れたあとにも収益を得るためにどうするか、そこにブランド化や規格化があるわけです。こういった側面は事業を伸ばす知財の典型的なものだと思います。

── 齋藤先生が主にお仕事として取り組まれていることを具体的にお伺いできますか?

私の役割は、バーチャル知財部と読んでいます。最近はスタートアップさんやマザーズ上場くらいの企業さんでも、やらなくてはならない知財活動というのが増えています。ですが、専任者を雇うほどでもない。また大企業であっても、新事業を担当されている方は、社内の知財部門のリソースを借りられなかったりします。そうした孤軍奮闘している人がいる。そこで私が6ヶ月間バーチャル知財部長をやります、という取り組みになります。事業に関係した知財活動はたくさんあります。出願だけでなくて、証拠保全、契約交渉、調査解析、紛争解決、規約制定などなどです。これらは全部やらないといけないのですが、いつどのようにやれば良いかわからない。そこでクライアントの経営課題をヒアリングして、私がバーチャル知財部長として必要なことを進めていきます。その意味で、社長さんや経営幹部の方、管理部やコンプライアンス部門などから計画をインプットしていただいています。

── 経営レベルの計画から必要な知財プロセスを提案して実行されているのですね。その中でも特に重視されているプロセスはございますか?

一つはやはり発明のブレストですね。実はAmplifiedを使い始めてから確立したサービスで、「ライブ特許調査サービス」というものを作りました。発明のブレストというのはこれまでもやってきました。ブレストの成果として、こういう特許を出したら市場を取れるのではないか、という案が出ます。今までは、その案に対する調査結果が出てくるのに2週間くらいかかっていたわけです。このタイムラグはどうしようもなかった。そこで、Amplifiedをブレストの場に持ち込んで、調査結果をリアルタイムに見せて、お客さんと一緒に読んでいます。

実際の課題はタイムラグだけではないです。公開公報というのは、本当に読みにくいんですね。エンジニアなど、知財の知識経験がない方は読めない。実際に、従来の特許調査のレポートとして、ランク付けされた公報を読んでおいてくださいと提出するわけですが、大体読まれないんですね。「ライブ特許調査」の特徴は、その場で公報を読み解くということです。こんなことが書いてあるよ、ここは違いますね、といった公報の内容をその場で読み聞かせて解説します。

こうしてリアルタイムに説明すると、相手の反応が全然違います。エンジニアであれば、より良いアイデアやひらめきを伝えてきますし、知財部門であれば出願できそうかどうか意見してきます。こういったアイデア出しの現場で特許を解説することでインタラクティブにできるし、この価値は安くないです。皆さん感動してくれます。

また、お客様自身の専門性も大きい。私はソフトウェアが専門なので、決して機械構造の専門家ではありません。ですが、ライブ調査でギアを調査したときなどは、図面を一緒に見てエンジニアの方が様々な指摘をしてくれました。ライブの良さは一つのチームとしての専門性の融合であって、調べる人と頼む人という関係ではないんです。複数の専門を持つチームがリアルタイムに特許と向き合うことで、特許を読み解くスピードと正確性が上がっていきます。そこで得られた知見をディスカッション機能に残して、ブレスト後にメンバーが確認してフィードバックできることで、特許に触れる機会を増やせていると思います。

── Amplifiedのリアルタイムインターフェースは非常に力を入れているデザインなので、ご活用いただけて嬉しいです。速さと精度の両面で十分でしょうか?

Amplifiedはとにかくレスポンスが速く精度も十分なので、この目的にしっかりとついてきてくれます。こうしたリアルタイムの議論は10秒以上の沈黙は耐えられないんですね。例えば発明提案の文章を入れると、Amplifiedは5秒以内に返ってきてくれるので、少し公報の説明をしたりアイデアについて雑談したりするだけで場を繋げられます。Amplifiedを試して、そのレスポンスが保証されていることが確認できて、これならサービスとして提供できるということになりました。

精度の面ではお客様に十分納得していただける情報をライブで提供できています。調査ツールにおいて精度という話はよく言われますが、それはあくまでも足切りの話だと思います。ある程度以上の文献がきちんと見つけられれば、それより先は目的によって変わります。現状では、エンジニアや参加者のみなさんが、見つかった特許を元に勝手に議論をし出します。それくらい関連性があるものが得られています。

ある大企業のクライアントでは、発明ブレストを社内に浸透させたい、また、どういうもので特許が取れるのかを理解させたいというニーズがありました。これを知財部の一担当者だけでやるのは難しい。そこでライブ調査をしてみて、これならエンジニアを飽きさせずにブレストができるということになりました。新サービスとして手応えを感じています。

── 私がAmplifiedを紹介する際にも、こうしたリアルタイムな調査と議論を一つの活用方法として提案しているのですが、一人では使えても、チームで使いこなすことに抵抗を感じる方がいるというのが実感です。

私もそう思います。弁理士や知財アナリストとして優秀な人材はたくさんいますが、ライブ調査をしようと思うと違ったスキルが必要になってきます。一つは対面でのコミュニケーションだと思います。知財のお仕事は黙々と集中して一人でやる文化なので、いざライブでお客様と話をしながら調査もするとなると結構汗をかきます。

弁理士もアナリストも、特に審査官を経験した人は、公報を読むのがめちゃくちゃ速いです。一方で、その内容を自分が理解するだけではなく、エンジニアなどの当事者にわかりやすく伝え、同時に調査もするというのは、これまでの仕事の仕方と勝手が違うのだろうなと思います。ただ、これは練習の側面もあると思ってます。人材のポテンシャルは十分なので、ライブ調査ができる人を増やしていきたいと思っています。

── 一般的には、知財業務は権利を取ることと認識されていると思いますが、齋藤先生のお仕事はだいぶ違って見えます。齋藤先生がこうした取り組みを進めていらっしゃるのは、どのような問題意識からでしょうか?

私は、事業のために知財を扱える人材が眠ってしまっているということに問題意識を持っています。私自身、事業を強くする知財スペシャリストを標榜していますが、同様の気持ちの人はたくさんいるのではないかと思います。例えば、知的財産アナリストという資格があります。この資格を持った方は1000人ほどいて、多くは企業で働いています。この資格者は文字通り、ランドスケープレポートや価値評価など、経営に資する知財分析をする能力を持っています。ですが、企業内での仕事は全然変わらない。事業戦略を練るから、知財アナリストにランドスケープレポートを作る仕事が来るかというと、ないんです。毎日、出願やってます、中間処理やってますと変わらないことが多いんですね。

これはもったいない。私はNBIL5という団体を運営していまして、ここで知財アナリストと事業オーナーとのマッチングをする場所を作りました。そうすると力を持て余していたアナリストは積極的に参加してくれて、事業オーナーはそこから出てきたレポートに感動していました。ここでもアナリストの方々にAmplifiedを使っていただいて、発明ブレストとライブ調査にチャレンジをしてもらっています。こうしたコミュニティの現実を見て、事業のために知財を扱える人材を活かす余地がたくさんあると感じています。アナリストが経営者に価値ある情報を提供する中で、こうした人材が活躍の場を広げてくれたらと思っています。

また、これまで特許に触れていなかった人に、特許に親しんでいただきたい。ライブ調査をやることの良さは、エンジニアや事業部門の人から、特許からこういうことが分かるのか、こんなことができるのか、という反応が得られることです。そうして特許を読むことのハードルが下がることで、少ないリソースの中でもしっかりとした知財活動ができるようになってきます。実際、ライブ調査後に、お客様がAmplified上に書き込みをしてくれています。そうした通知を受けるとすぐに返事をするようにしています。こうしてバーチャル知財部としてのお客様とのパイプも太くなりますし、先方に知財活動を日常として定着させられます。

そして、事業の中で特許を扱える人が増えてくることで、知財人材との壁を壊せると思うのです。今まで、事業活動の中で知財にだけすごい壁があると感じてきました。知財の人に対して、調査や出願はお任せします、必要な時に声かけますね、と言ったコミュニケーションが多かったと思うのです。ライブ調査の取り組みから、こうした壁がなくなる手応えを感じています。

── こうした活動を通じて齋藤先生が実現したいことはどのようなものでしょうか?

事業があっての特許だと思いますので、事業の成功を一緒に味わいたいですね。私はソフトウェアエンジニアから知財の世界に来ましたが、その時に一番驚いたのはこんなルールを全然知らなかったということでした。ソフトウェアの特許は少しとんちのようなところがあって、こんな思いつきみたいなので特許が取れるのかという驚きをよく覚えています。エンジニアとしてそのことを知っていれば、もっと事業をよくできたのではないかと。贅沢を言えば、ソフトウェアをやっている方全員に、特許の面白さと重要性を知ってもらいたいと思います。ソフトウェアのビジネスが増える中で、ソフトウェアを作る人たちがそのことを知っていれば、より良い知財活動ができて、より良いソフトウェアビジネスとして成功していってくれるだろうと思います。そういうことを一緒にやっていきたい。それを広めるためにライブ調査が契機になると思います。

ぜひ企業の知財部の方にもご自身でライブ調査に挑戦してみていただきたいです。私も正直やってみるまで、できるかわかりませんでした。お客様が飽きずに付き合ってくれるかどうかとか、言葉がわからないのでもういいですと言われたらどうしようか、と思っていました。ですが、やってみたら受け入れられました。コーポレートの知財部や、エンジニアで知財にいる方では、社内でライブ調査をやってみたら良いと思います。もちろん、ライブ調査のお手伝いしますので、いつでもご相談いただければと思います。